07. 若い世代に多いめまい

1)浮遊耳石症(良性発作性頭位めまい症)

15歳以下の小児71名の疾患内訳

受診者10,607名中、15歳以下は71名(全体の0.67%、男性名30名、女性41名)で、良性発作性頭位めまいが49名、起立性調節障害8名、メニエール病5名(うち3名が浮遊耳石症を合併)、乗り物酔い2名、心因性めまい2名、遅発性内リンパ水腫、低音障害型難聴、突発性難聴、耳鳴、常にゆらぐ(心因性の可能性)1名でした(上図)。小児の受診者の69%が浮遊耳石症でした。二例を紹介します。

症例:14歳女性、中学生

症例:14歳男性、中学生

上の2名ともに、「1.頭抜けて多いめまい」で解説した浮遊耳石症(良性発作性頭位めまい症を含む)です。生活習慣では大半が、外で遊ばず、横になってテレビを観る、ゲームをする、塾通いなど、運動不足が原因でした。再発予防の生活指導で、1ヵ月後には症状が改善しています。2018年4月時点で、15~19歳は107名で、良性発作性頭位めまい症81名(75.7%)、メニエール病8名、起立性調節障害(低血圧)7名、低音障害型感音難聴6名、心因性めまい2名、下船病1名、前庭神経炎1名、両側感音難聴1名でした。

起立性調節障害(低血圧)は「6.女性に多いめまい、耳症状」で触れましたが、女性と小児に多い症状です。しばしば頭痛を訴え、朝起きにくい、ゆらぐ、長く立っていると気分が悪くなる、しばしば休学する、の訴えで受診します。高度になると失神発作をともない、転倒します。登校しても、気分不快で途中で下校することも珍しくありません。体質と思われがちですが、毎日よく運動(少し息の上がる有酸素運動)すると、筋肉が酸素を必要し、心臓の反応性が向上し、早晩改善します。この病気でも不活発な生活が有害なのです。

2)遅発性内リンパ水腫

遅発性内リンパ水腫50名の年齢分布

遅発性内リンパ水腫50名の発症年齢分布

遅発性内リンパ水腫は、多くは幼少期に一側の聾や高度難聴を発症し、数年~十数年後に、メニエール病に似た、回転性めまい発作を反復する場合(遅発性内リンパ水腫同側型)と、健側の難聴、耳鳴、耳閉塞を反復する場合(同対側型)がありますい。全受診者10,607名中、50名(0.47%)と稀な病気で、受診時の年齢は30、40代が最多でしたが(上図、上段)、症状発現の時期は、丘の上の塔のように20、30代が突出し、全体の58%をしめました(上図、下段)。発症機序はかならずしも明らかでありませんが、幼少期の聾や高度難聴の発症(多くは流行性耳下腺炎、髄膜炎、外傷など)がきっかけとなります。同側の内リンパ代謝組織のみがダメージを受け、年余をへて同側耳の内リンパ水腫をきたし、めまいを発症するものを同側型といいます。すでに聾なので、耳症状を発症しません。

一方、髄膜炎など炎症で、健側耳の内耳の機能が消失し、健側耳の内リンパ代謝がダメージを受けると、健側耳に内リンパ水腫が発症します。メニエール病に似た、難聴や回転性めまい発作を反復します。健側型では、すでに一耳が聾か高度難聴なので、コミュニケーションが脅かされ深刻です。問題は診断にあります。幼少期に一側の聾や高度難聴を発症し、たまたまメニエール病を発症すると、症状は対側型の遅発性内リンパ水腫と同じです。近年増加している、浮遊耳石症も時に、長時間の回転性めまい、難聴、耳閉塞、耳鳴を発現するので、鑑別診断に困難をともなうことが少なくありません。

遅発性内リンパ水腫50名の初診時の罹病期間

当施設の50名の、罹病期間は、2週間から60年まで大きくばらついおり、一定の傾向は見られませんでした(上図)。症状から同側型が28例(56%)、対側型が22例(44%)でした。聾や高度難聴の原因は、幼小児期のムンプス難聴(流行性耳下腺炎の後遺症)、髄膜炎いずれかが28名(56%)、成人後の前身麻酔手術3名(6%)、突発性難聴2名、中耳炎手術後の聾(内耳炎の合併)1名でした。本疾患はきわめて稀で、対側型ではメニエール病を除外する必要がありますが、予後は比較的良好なものが多いようです。規則的な生活、過労や睡眠不足を避ける、対象的に浸透圧利尿剤を頓服するなどです。頑固に回転性めまい発作をくり返す場合(同側型))は、鼓膜内にゲンタマイシンを注入し、内耳機能を消失させることもあります。

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