お年寄りに多い原因

下の図は2012/2013年度の「国民衛生の動向」の有訴率の表を、男女別に図に書きかえたものです。男女で少し異なりますが、加齢にともない、おおよそ筋骨格系(腰痛、手足関節痛)→感覚器(見づらい、聞こえにくい)・神経(手足しびれ)→呼吸循環器系(息切れ、動悸)の順番に訴えが増加しています。めまいは加齢にともない少しは増加しますが、同じ感覚器である視覚や聴覚に比べ、前庭器に由来するめまいは高率ではありません。

一般集団の人口千に対する有訴率(「国民衛生の動向」)
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2015年9月末時点の9年5ヶ月間に7,751名が受診し、65歳以上のお年寄りは1,599名で、全例の20.6 %を占めました。疾患別では浮遊耳石症(良性発作性頭位めまい症を含む)が74.2 %ととび抜けて多く、この割合は全世代集計の73.9 %と同じです(下図、上段)。メニエール病の16.2 %も全世代の16.5 %に近く、差は見られません。お年寄りと全世代を比較して(χ2検定)、統計学的に有意の違いのあった病気は、低音障害型感音難聴43名(めまいを欠くメニエール病)が高齢者で少なく、感音難聴・耳鳴27名、中枢障害25名、前庭機能低下22名が高齢者で多いという結果でした(下図、上段)。

お年寄りと全世代の集計で、違いのある病気は確かにありますが、絶対数は少なく、お年寄りに特有の目だった病気は見られませんでした。しかし、お年寄りに特徴的な現象はあります。若い世代よりも病気が長引きやすく、再発が多いのです。ある期間に受診した浮遊耳石症(良性発作性頭位めまい症を含む)1,589名の、受診回数を調べたことがあります(下図、下段)。全体の88.5 %が受診1,2回(受診1ヶ月以内に軽快・治癒)でしたが、ごく少数が3回以上受診していました。受診回数毎の患者さまの平均年齢を調べると、回数が増すにつれ平均年齢が増えていました(下図、下段)。

全受診者と高齢者の疾患内訳(2006.5-2015.9)
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浮遊耳石患者1,589名の受診回数(2010.9-2014.10)
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下の図の上段は、お年寄りの受診者1,599名の合併症を集計したものです。高血圧、整形外科疾患、不眠症の合併が女性でとびぬけて高く、割合は低下しますが高脂血症、心臓病がこれらにつづきます。これらの合併症は、お年寄りでめまいの発症や予後とどのように関わっているのでしょうか?下の図の下段左に、2012/2013年度版「国民衛生の動向」の不眠症、高血圧、整形外科疾患、心疾患の通院者率を、年代別、男女別に示しました。下段右は、当施設の受診患者7,751名の合併症の割合を、同様に示したものです。

二つの資料を比べると、男女ともに高血圧の合併に差はなく、不眠症は全世代で患者群が高く、整形外科疾患の合併は、患者群の女性60~80代、男性80代で高いことがわかります。加齢で筋骨格系が衰え、腰痛、膝痛、脊柱管狭窄症、さらに腰椎や胸椎の圧迫骨折、股関節や膝の人工関節は、日々の活動を大きく制限します。この結果、外出が少ない、歩かない、長く坐る、昼も横になる、運動しない不活発な生活となり、めまいの大多数を占める良性発作性頭位めまい症の発症をうながし、改善をさまたげます。

若い世代でも、仕事がデスクワーク、歩かない、運動しない、自宅で長くパソコンする、横になってテレビ・スマホを観る、などのライフスタイルが多く、良性発作性頭位めまい症が日常的に見られます。しかし、再発予防の運動を指導すると、短期間に改善しますが、お年寄りは整形外科疾患のために、思うようにできません。これこそが、お年寄りでめまいが長引き、再発の多い理由です。さらに加齢とともに、足底の感覚や反射機能が鈍くなり、少しの揺らぎでも転倒する可能性が生まれてきます。訴えにおうじて、外出するとき杖や歩行器を使用する、リュックやカートを利用する、をお勧めしています。

高齢者(≧65)1,599名の合併症(2006.5-2015.9)
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一般集団の通院者率(「国民衛生の動向」)と
全受診者(2006.5-2015.9)の合併症の割合
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